客席人生

ふりかえれば、いつも客席にいる。

幼少期に観た子供向けミュージカルに始まって
思春期には己の所在なさを埋めるべく劇場に通い
劇作家・演出家として最後列のはじっこで本番を見守って
最近は時間さえあれば演芸場の通路側にすわっている。

人間誰しも各々の《居場所》というものがあるならば
もはや私にとってそれは客席なのだと認めざるを得ない。

舞台の上にいる誰かを目で追いながら、虚構の世界に身を投じる。
何にも縛られず、純粋に自由でいられたのはそんな時だけだった。

つまりは、娯楽の中でしか生きられないのだ。

そして私と同じように娯楽なしではまともに呼吸もできず
心がどこかへ浮浪してしまう人はきっとたくさんいるに違いない。

富士山頂でご来光なんて見なくていい。
客席にいられればそれでいい。

そんなみなさまにとびきりの娯楽を。
生きててよかったと思えるような至福の瞬間を。

娯楽百貨はそのためだけに在りたい。